2025年10月、愛知県稲沢市民病院で患者の個人情報が記載された書類がカラスに持ち去られ、周囲に散乱していたことが報じられた。
まるで自然界が実施した「無料のペネトレーションテスト」──しかも、ゴミ処理場ならぬ“ガベージコレクション”によって発覚したという、なんとも皮肉な事件である。
🗞 ゴミ置き場から空へ──“自然界のセキュリティ監査”
報道によると、問題が発覚したのは病院敷地内のゴミ集積所。
廃棄予定だった書類がシュレッダー処理されずにそのまま置かれていたところ、カラスが巣材と勘違いして持ち去り、空から“情報漏えい”を撒き散らす形になった。
もはやIT的な「ガベージコレクション(不要データの自動回収)」ではなく、リアルなカラスによる物理的ガベコレである。
この一件、もはや笑うしかない──が、同時に笑えない。
🧩 「システムの脆弱性」ではなく「人の脆弱性」
近年、個人情報漏えいというと「サイバー攻撃」や「マルウェア感染」を想起しがちだ。
しかし今回の稲沢市民病院のケースは、最も古典的で、最も根深いヒューマンエラーによるもの。
言い換えれば、「人間が最後の脆弱性(the last vulnerability)」であることを見事に証明した事件でもある。
情報セキュリティの世界では、システムパッチよりも人への教育が難しいとよく言われる。
その難しさを、カラスが代わりに可視化してくれた──皮肉な“自然監査”だ。
🏥 「公表なし」の沈黙が招く二次被害
さらに問題なのは、病院側が公式リリースを出していない点である。
市民の税金で運営される公立病院として、「説明責任の軽視」は看過できない。
発生した事実を正直に公表し、再発防止策を明確にすることこそ、信頼回復の第一歩であるはずだ。
“隠す”ことがリスクを軽減する時代は終わった。
透明性こそが、最も有効なセキュリティ対策である。
🪶 まとめ:自然界の方が、よほど正直だった
結果的に、カラスは「廃棄ミス」という“ゴミ”を見逃さず、病院よりも早く異常を検知してくれたわけだ。
まさに自然界による無料のペネトレーションテスト。
人間の怠慢をカラスが暴く──そんな現代的寓話が、情報管理の教訓として語り継がれていくことを願う。
