【セキュリティ事件簿#2025-430】Microsoft Azure障害:企業が見直すべき“耐障害力 2025/10/30

 

はじめに

2025年10月30日、Microsoft Azure(以下「Azure」)を中心に、世界規模のクラウド障害が発生しました。多くの企業・サービスが影響を受け、「クラウド耐障害力(Resilience)」の再考を迫られた事件です。本稿では、何が起きたか、なぜ起きたか、そして今、企業が何を見直すべきかを整理します。


発生概要

  • 障害発生時刻:2025年10月29日午前 / UTC 15:45 頃から異常を観測。 

  • 記録された影響範囲:Azure を軸に、Microsoft 365、Xbox、ゲーム/エンタメ分野、航空・流通・金融のサービスも断続的に停止。

  • 影響持続時間:約8時間超。

  • 原因:Azure のグローバルエッジ・トラフィックルーティング機能である Azure Front Door(AFD) に対する“意図せぬ設定変更”がトリガー。

  • 対応:設定変更の凍結、既知の良好な構成へのロールバック、トラフィックの別ルートへの切替。


なぜこのような大規模障害になったか

1. 単一のエントリポイントに依存

AFD のように「1つのグローバルルーティング基盤」が多数のサービス・顧客トラフィックを集約しており、ここでの異常が「波及」しやすい構造です。

2. 設定変更の影響範囲の過小評価

変更がトラフィック経路・エッジノードに及ぼす影響を十分に検証できておらず、誤った構成が「デプロイ済み」となった点が引き金でした。

3. “耐障害設計”より“効率・統合”が優先されてきた背景

クラウド事業者も効率化・統合化を進める中で、まさに「ハイパースケール」モデルの脆弱性が鮮明化しました。


企業として今、見直すべき“耐障害力”のポイント

A. クラウド基盤の依存先多様化

大手のクラウド事業者1社に依存する構成は、今回のような「根幹サービス停止」で致命的になります。マルチクラウド/ハイブリッドクラウドの検討が必須です。

B. トラフィックルーティング・フェイルオーバー策の設計

  • エントリポイントがダウンした際の代替ルートをあらかじめ設計・検証

  • DNS、CDN、エッジサービスに対する監視・アラート設計強化

C. 定期的な障害シナリオ訓練(DR/BCP演習)

クラウド基盤であっても「障害は起こる」という前提に立ち、具体的なシナリオを想定した演習が必要です。

D. 設定変更管理プロセスの強化

「意図せぬ構成変更」が今回のトリガーであったことから、変更管理(Change Management)のプロセス設計見直しが求められます。

E. 影響範囲の可視化とビジネス継続計画(BCP)との連携

障害が業務に及ぼす“連鎖的影響”を定量・定性で把握し、被害最小化策をBCPとして整備しておくべきです。

おわりに

今回の Azure 障害は、「ハイパースケールなクラウドサービスだから安心」という幻想を打ち砕くものでした。企業は今こそ「耐障害力=レジリエンス」を見直すフェーズにあります。特に、設定変更やルーティング基盤への依存度が高いサービスに対しては、構成の透明化・冗長化・訓練に抜かりなく備えておきたいところです。

出典①:Microsoft Azure Front Door Outage Analysis: October 29, 2025アーカイブ

出典②:Huge Microsoft outage hit 365, Xbox, and beyond — deployment of fix for Azure breakdown rolled outアーカイブ

出典③:Microsoft says it’s recovering after Azure outage took down 365, Xbox, and Starbucksアーカイブ