明暗が分かれたTポイントとPontaポイント Tポイントはどこに向かうのかTポイントは息の長いポイントサービスであるが、ポイントの貯めにカードを差し出すのがイヤで個人的には貧者向けのポイントサービスと思っている。
以前、メインバンクとして新生銀行を使っていたが、Tポイントがたまる無駄なサービスの開始をきっかけにメインバンクを変更した。
以前はSBI証券を使っていたが、こちらもポイントサービスでたまるポイントがTポイントのみとなることを受けて、証券会社を変更した。
約3年の時を経て、2022年4月以降にYahoo!ショッピングやPayPayモールでTポイントではなくPayPayボーナスが貯まるようになる。
また、ソフトバンクもTポイントを終了し、PayPayボーナスに交換できるソフトバンクポイントに切り替える。
既にYahoo!ショッピングではPayPayを中心にキャンペーンが実施されている。
Tポイントは勢いを失っているが、逆に息を吹き返したのがPontaポイントだ。
Pontaが復活したのはKDDIとの提携があったためだろう。
なぜ、PontaがKDDIと提携したことで復活したのか。
共通ポイントに加盟する企業の目的は"相互送客"だ。他の加盟店のお客さんを送ってもらい、自社のお客さんを他の加盟店に送るのが共通ポイントの仕組みとなる。
しかし、楽天ポイントやdポイントは、加盟店にとって"相互送客"ではなく、ほぼ一方的な"集客"となる。楽天市場などでは楽天グループの利用でポイントがアップするプログラムであるSPU(スーパーポイントアッププログラム)などのキャンペーンで楽天ポイントが大盤振る舞いされており、その楽天ポイントを楽天ポイントカードなどの加盟店に送っている。楽天が2020年に発行したポイント数は4,700億円。このポイントを加盟店に送ります、と言われれば他の共通ポイントを導入していたとしても楽天ポイントカード加盟店にひっくり返る事はあるだろう。
dポイントも同様、ドコモ側がキャンペーンやdカード GOLDなどでポイントを大盤振る舞いしている。dカード GOLDは年会費11,000円(税込)のゴールドカードとなるが、会員数は800万人を突破。年会費無料のdカードよりも保有者が多い。
なぜ年会費が11,000円もするゴールドカードを保有しているのだろうか。理由は、ドコモの料金やドコモ光の料金に対して10%のdポイントを獲得できるためだ。1ヵ月10,000円程度のドコモ料金がある場合、毎月1,000ポイントを獲得できる。1年で12,000ポイント獲得できれば、年会費以上おトクになる計算だ。毎月1,000ポイントを獲得しているdカード GOLD会員が800万人いると考えると、1ヵ月で80億円分のdポイントが発行されており、これはドコモ負担のポイントとなるはずだ。以前PayPayが行っていた100億円あげちゃうキャンペーンを毎月行っているようなイメージと考えるとわかりやすい。
ここ数年でTポイントやPontaの加盟店から楽天ポイントやdポイントの加盟店に鞍替えする企業も多い。例えば大戸屋はPontaポイントから楽天ポイントに切り替え、ドトールはTポイントからdポイントに切り替え、ファミリーマートはTポイントのみの取り扱いだったが、dポイントと楽天ポイントが追加となっている。共通ポイントを鞍替えする理由は圧倒的な送客力に魅力を感じてのことだろう。
しかし、PontaがKDDIと提携したことにより、KDDIが発行する大量のポイントをPonta加盟店に送客できるようになり、一気にPontaが復活。au PAYを利用すると最大20%のPontaポイントを還元する「たぬきの大恩返し」などのキャンペーンを実施し、Pontaが攻めに転じている。
一方、ソフトバンクやヤフーもポイントの大盤振る舞いを行っているが、大盤振る舞いするポイントがTポイントではなく、PayPayボーナスとなる。PayPay加盟店への送客効果はあるが、Tポイント加盟店への送客効果は見えてこない。このような事から、Tポイントは厳しい状況になっている。
実は、ここ10年間のポイント再編の火付け役はTポイントとヤフー陣営であり、これがなければ、そもそも楽天がリアル加盟店でのポイントサービス参入やドコモがdポイントを開始したり、KDDIとPontaが提携したりする事もなかったのかもしれない。Yahoo!ポイントとTポイントの統合は、過去10年間で最もポイント業界に影響を及ぼしたニュースと言えるだろう。
発表当時はTポイントはANAと相互ポイント交換を行っており、Yahoo!ポイントはJALと相互ポイント交換を行っていた。このTポイントとYahoo!ポイントが統合するという事はANAとJALのマイルが相互に交換できるようになる。
TポイントとYahoo!ポイントの関係
さらに、TポイントとYahoo!ポイントが統合すると、Tポイントとnanacoポイントの相互交換が可能になる。当時はTポイント=ファミリーマートであったため、ファミリーマートで貯めたTポイントをnanacoポイントに交換すればセブン-イレブンで利用可能となった。そのため、2013年3月にはYahoo!ポイントとnanacoポイントの提携が解除。同じくJALとYahoo!ポイントの提携も解除となった。宙ぶらりんになったnanacoポイントは同年4月にANAと提携。
発表から約1年後の2013年7月にYahoo!ポイントが廃止されTポイントに統合。
ここからの動きが激しい。2014年5月にauがau WALLETを開始し、au WALLETプリペイドカード(現au PAYプリペイドカード)にポイントをチャージする事でMastercard加盟店で利用できるようになった。同年7月にはソフトバンクポイントがTポイントに切り替えとなる。同じ月にリクルートポイントとPontaポイントが提携を開始。
2013年7月時点でのポイント提携図
2014年10月には楽天が実店舗で利用できる楽天ポイントカード(当時はRポイントカード)を発行した。ヤフー+Tポイント+ソフトバンク連合 vs リクルート+Ponta連合+楽天と言う構図だ。auとソフトバンクに出遅れたドコモも2015年12月にdポイントを開始。現在の4大共通ポイントの誕生だ。
dポイントの参加で4大共通ポイントの誕生
2016年2月にはJR東日本のポイントプログラムを統合するJRE POINTを開始し、同年4月には阪急阪神グループがSポイントを開始。6月にはイオングループがWAON POINTを開始し、現金でもイオングループでポイントを貯められるようになった。2016年はグループ内共通ポイント元年と言えるだろう。
2017年7月にはJR九州のインターネット列車予約サービス、クレジットカードのJQ CARD、IC乗車券SUGOCAのポイントが統合され、JRキューポとして誕生。2017年12月にSuicaポイントがJRE POINTに、2018年6月にビューカードのポイントであるビューサンクスポイントがJRE POINTに切り替わり、JR東日本の大部分のポイントはJRE POINTになった。
2019年11月にはファミリーマートがファミペイを開始し、Tポイントだけでなくdポイントと楽天ポイントにも対応。その後、au WALLETのポイントがPontaポイントに統合。2020年5月の事だ。auの大盤振る舞いが始まり、ここからPontaの快進撃が始まる。
2021年5月にはリクルートポイントがdポイントと提携。同年6月にえきねっとポイントがJRE POINTに統合し、9月にはイオンカードのときめきポイントがWAON POINTに変更。
このように、これまで様々なポイントプログラムの提携・統合などがあったが、元を辿ると2013年7月のYahoo!ポイントを廃止しTポイントの統合がきっかけとなっている事がわかるだろう。この統合がなければポイント業界は全く別の進化となっていたはずであり、2022年4月にヤフーサービスの一部でTポイントを終了、ソフトバンクがTポイントからソフトバンクポイントに変更されるのは感慨深い。
2022年4月以降のポイント提携図
現在、TポイントとしてはTマネーでの高還元キャンペーンやT NEOBANKの開始、SBI証券やネオモバ証券でのTポイント利用なども積極的に開始しているが、キャンペーンなどがどこまで続けられるかどうかだろう。やはり数十パーセントのポイント還元を行う場合、ポイント発行の原資が必要となり、○○経済圏と言った企業との提携がなければキャンペーンを続けるのは難しい。
ここからは独断と偏見で、Tポイントの今後を少し考えて見た。
常に10%程度のポイントを付与しているのが家電量販店や百貨店などとなり、提携するのも良いと思った。しかし、これらは自社で発行したポイントを再度使ってもらうための仕掛けのため、付与したポイントが共通ポイントとしてコンビニなどで使われると成り立たないモデルだ。
ネットショッピングで共通ポイントを導入していないAmazonとの組み合わせも考えてみた。Amazonはd払いとの提携があり、dポイントを使う事ができるが、共通ポイントを導入しているわけではない。
Amazonポイントの開始は2007年と意外と老舗のポイントサービスだ。しかし、共通ポイントなどのように上手に利用されているとも思えない。
Amazonではスマホ決済のAmazon Payもリアル加盟店で提供しているが、正直力の入れ具合はイマイチだ。Tポイントと提携することで、実店舗の導入は進みやすくなる。ただし、Amazonで発行したポイントを他の企業への送客するツールで考えると、この組み合わせも可能性は低い。
○○ペイでは、TOYOTA Walletが提携先としては面白いかもしれない。コード決済は銀行Pay、BANK Pay、TS CUBIC Payに対応し、非接触決済はiD/Mastercard、QUICPay/JCBに対応。オンラインはMastercard加盟店で利用できる。TS CUBIC CARDの利用明細も確認できるなど、様々なスマホ決済に対応しているのも特徴だ。
TOYOTA Walletの残高をiD/Mastercard残高、QUICPay残高にチャージして利用すると2%相当を還元するサービスも開始となり、決済分野には力を入れている。ポイントの提携はないため、提携先としては面白い。ただし、TマネーとTOYOTA WalletのiD/Mastercardが被ってしまう。ヤフーとTポイントがうまくいかなかった理由として、やはり同じようなサービスを提供している事があったためだろう。
最もすっきりするのは、PayPayがTポイントを吸収し、「PayPayポイントカード(Tカードをリニューアルした場合)」を発行する事だ。Yahoo!ショッピングやPayPayモール、PayPayで大盤振る舞いしているPayPayボーナスを、PayPayポイントカード加盟店に送客できるため、Tポイントの一人負けは避けられる。PayPayとしても共通ポイントを一から作り、加盟店開拓するよりは、Tポイントの加盟店を全て吸収した方が早い。
現在、Tポイント・ジャパンの主要株主を確認すると、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、Zホールディングス、ソフトバンクとあるように、Zホールディングスもソフトバンクも株主として残っているため、可能性がないわけでもない。
ただし、いくつか不具合もある。スマホ決済サービスとしてTポイントと提携しているファミペイからはTポイントの機能が消えそうだ。また、Tポイントは金融サービスとも提携もあり、SBI証券でTポイントを使った投資ができたり、T NEOBANKで銀行サービスを提供していたりするが、PayPay証券やPayPay銀行との兼ね合いも出てくる。
2023年にはTポイントは20周年を迎える。筆者以上にTポイント陣営は考えているだろう。日本のポイント文化を長年牽引してきた老舗のTポイントの将来はいかに?