「残高をマイナスにしてから帳消しにして無限にお金を増やせる」というバグをJPモルガン・チェース銀行に報告したセキュリティ研究者が報告後に敵対的な仕打ちを受けたとして、「銀行がセキュリティ研究者をどのように扱うのか知っておくべき」と警告を発しています。
傘下の商業銀行であるJPモルガン・チェース銀行にお金の無限増殖バグを報告したのは、セキュリティ研究者のChad Scira氏。コンピューター上で並行して行われる処理のタイミングの違いによって最終的な結果が変化してしまうという現象が生じる「 」に関するバグがJPモルガン・チェース銀行のシステムに存在していると知ったScira氏は、JPモルガン・チェース銀行の許可を得た上で複数のアカウントを使って不安定なインターネット環境下でポイントの送付を繰り返すという実験を行いました。
この実験の結果、実験に使用したアカウントの間で、「ポイント残高がマイナスになるまで送付できる」という現象が確認されました。その結果、ポイント残高が512万698ポイントのアカウントと、ポイント残高がマイナス500万ポイントの口座を作成することができたとのことです。500万ポイントは現金に還元すると5000ドル(約52万円)ですが、航空券費用として使った場合には7万6810ドル(約800万円)相当とのこと。
JPモルガン・チェース銀行のアカウントには、「アカウント削除時にはポイントを全額消去する」という仕様が存在しました。この仕様について、「マイナスのポイントも全部消去されるのでは?」とにらんだScira氏が実験を行ったところ、予測通りにマイナスのポイントまで全額消去されたことが確認されました。
さらにScira氏は、丸もうけした512万698ポイントを現金に還元するという実験も敢行。512万698ポイントのうちの500万ポイントを現金化したところ、見事5000ドルに還元されたことが確認され、潜在的に「現金の無限増殖が可能」であることが立証されました。
Scira氏が一連の実験を行った2016年当時はJPモルガン・チェース銀行は脆弱性の を実施していなかったため、Scira氏はJPモルガン・チェース銀行のカスタマーサービスチームの公式Twitterアカウント( )に状況を逐一報告しながら実験を進めていました。Scira氏の報告によって一連の問題は修正されたそうですが、報告からおよそ一週間後にScira氏はJPモルガン・チェース銀行から「非常に敵対的なメール」を受け取ったとのこと。
さらに、JPモルガン・チェース銀行はScira氏が同銀行に保有していたプライベートなアカウントを全て削除し、当座預金口座と普通預金口座を全て解約。「あなたのアカウントを削除しました」という手紙を送りつけました。
Scira氏によると、Scira氏だけでなく、Scira氏の家族も口座解約などの仕打ちを受けたとのこと。Scira氏は「銀行が助けてくれる人々にこのような仕打ちをしたがるというのはとても残念です。このような仕打ちを続けるということは自社の評判を傷つけるというだけでなく、バグ報告などを減らすということにつながると気がついてくれることを願っています」とコメントしています。