《2階○金》《妻50代パート基本的に家》新手プロ窃盗グループの綿密「予習メモ」公開
「家族構成」から「間取り図」も #窃盗団 #文春オンライン bunshun.jp/articles/-/437…
「一家を丸裸にするような内容で、被害者が見たら震え上がるだろう。今の窃盗グループは昔の泥棒とは根本的に違う。高級住宅を狙って綿密に下調べをし、確実に大金を得られるように動いている」
メモには部屋の配置だけでなく、テレビの位置や扉の形状まで
2月にメモを公開した愛知県警の関係者はそう語る。メモには別居する娘が実家に帰る頻度や勤務先、乗っている車の特徴、ナンバーまで書かれていた。間取り図も詳細で、部屋の配置だけでなくテレビの位置や扉の形状まで網羅している。狙っていたのは金庫だろうか。「2階 ○金」という書き込みまであった。
県警は防犯の呼びかけなどを目的に公開したというが、一般人にこうしたプロの手口を防ぐ手立てがあるとは容易に想像しがたい。犯行は、綿密で大胆だ。
公開された資料の中には、押収メモだけでなく犯行グループを映した防犯カメラの映像もある。午前4時、愛知県内の真っ暗な住宅街にヘッドライトを消した1台の白い車が止まる。出てきた2人の男は1軒の豪邸の塀にとりついて中をうかがうと、1分ほどで立ち去った。そこにもまた、犯罪者たちの周到な準備の様子が見て取れる。
「犯行の下見と思われます。人目に付かないように深夜から早朝にかけて行うことが多いようですが、これとは別に昼間の明るい時間にスマホで撮影する場面を映したものもありました」
狙われるのは医者や会社役員、風俗店経営者たち
愛知県は長年、住宅を狙った侵入盗の被害件数が全国ワーストだった。昨年、件数こそワーストを脱却したが、被害総額6億円は全国最多。1件当たりの被害が大きく、それだけ高所得者が被害に遭っている実態がある。
「犯行グループが狙うのは、医者や会社役員、風俗店経営者たちです。所得が高く、自宅に多額の現金や貴金属、高級腕時計などがある場合が多いからでしょう。こうしたリストなどを扱う『情報屋』は闇で出回っている名簿や被害者の関係者や内部からの情報を犯行グループに流し、成果の一部を対価として受け取っているわけです」
投資用マンションや別荘購入者など高所得層が並ぶ名簿は闇で流通し、しばしば振り込め詐欺グループが使うこともある。愛知県警が押収した犯行メンバーのスマートフォンには、情報屋から実行犯に向けたSNSのやり取りも残されていた。
「一軒家80代のばあさん一人暮らし」
「200万で50%ずつです」
「空き案件で東京ですが、誰か行く人いませんか」
窃盗グループはこうした情報をもとに狙いを定め、下見などの準備に入る。使う車には偽造ナンバープレートを取り付け、バールなどの侵入のための工具や目立ちにくい黒の服、連絡用のインカムを用意する。そして実行に移すわけだが、実行犯同士のやり取りもまた生々しい。
「現金の有無とか分かるわけではないから、基本は数をこなさないと(利益は)上がらない」
「北の内偵入っているから市内合流でいい?」
室内で犯行グループとばったり鉢合わせたら……
実際の犯行は、短時間で手際よく済ませることが重要だ。こうしたグループによる事件を分析すると、見張り役が車の中で待機し、侵入役が玄関をバールでこじ開けたり、窓ガラスを割ったりして中に入るケースが大半だという。あとは金庫を丸ごと運び出し、装飾品や腕時計など値の張る小物貴金属をまとめて袋に詰めて逃げるだけだ。
窃盗犯罪の手口に詳しい別の警察関係者は「奴らは綿密で細かい準備をするが、犯行は大胆でもある。警備会社が提供するセキュリティーシステムがあっても平気で侵入する。警報が作動しても短時間でやれば逃げられる。それが一番効果的だと知っているのだろう」とうなる。
こうした手練れのグループは、暴力団と通じているとの指摘もある。そして先のSNSのやり取りにもあったように、利益を得るために次々とターゲットを見つけては組織的に犯行を繰り返す。