宿泊予約仲介プラットフォームの責任 東京地判令元.9.5(平28ワ32620)
私がこの世で最も忌み嫌う宿泊予約仲介プラットフォームはエクスぺデイア(Expedia)です。
2016年にイスラエルに訪問した際、エクスペディアで宿を予約したのだが、エクスペディアで予約後直接宿とやり取りが必要というクソな仕様で、イスラエル訪問初日に宿なしの憂き目にあった。
イスラエルから日本のエクスペディアのコールセンターに電話しても出てくるのはカタコトの日本語を話す中国人で埒が明かず、結局hotels.com(たぶん)で当日予約をして宿を確保した。オンライン宿泊予約プラットフォームで海外の宿を当日予約したのはこれが初体験であった。
日本帰国後にエクスペディアにクレームを入れるが返金されることはなく、頭にきて退会したのだが、退会後にエクスペディアから「ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。」という意味不明というか、小バカにされた感のメッセージを受けたことを今でも覚えている。
利用者が「静かな部屋」をリクエストして部屋を予約したが実態と異なっていたとして,利用者が予約仲介プラットフォーム事業者の責任を追及した事案があったので、転載しておく。
こんなしょーもない内容で訴えるのかと思ったが、案の定原告の主張は退けられた模様。
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事案の概要
Xは,Yが運営する宿泊施設予約サイト(本件サイト,Booking.com)を通じてマカオのaホテル(本件ホテル)を予約した。その際,「特別リクエスト」欄に「quiet room」と記載した。
Xが実際に本件ホテルに赴いたところ,仮囲いがあって工事中であり,Xは「静かな部屋」ではないとしてその場でキャンセルして宿泊しなかったが,当日キャンセルに当たるとして全額(816香港ドル)が決済された。その後,Xは,本件ホテルと直接交渉のために2度に渡って本件ホテルに赴いた。
Xは,Yに対し,特別リクエストを正確に伝達して仲介すべき債務の履行を怠ったことは債務不履行または不法行為にあたるなどとして,交渉のための航空運賃,支払うこととなった本件ホテルの宿泊費(キャンセル料)等の合計約20万円の損害賠償を求めた。なお,本人訴訟のようである。
ここで取り上げる争点
債務不履行または不法行為の成否
裁判所の判断
裁判所は本件ウェブサイトの位置づけについて次のように認定した。
本件ウェブサイトは,サイトを閲覧した顧客が,客室予約の手続を行うことのできるオンライン・プラットフォームであり,利用者は,無料で本件ウェブサイトを利用することができ,本件ウェブサイトを通じて予約が完了した時点以降,Yは,予約情報を宿泊施設に伝達し,利用者に予約確認書メールを宿泊施設に代わって送信し,利用者と宿泊施設との仲介のみを務めるものとされている。
次のように述べてYの責任を否定した。
Xは,Yが本件ウェブサイトに,本件ホテルの周りには仮囲いがあって工事中であるとの情報を掲載しなかったことがXの利益を侵害し,不法行為に当たると主張する。しかし,上記ア(ア)の約定(注:上記認定)を見ても,Yにおいて,本件ホテルの場所や宿泊料といった一般的な情報を超えて,本件ホテルが,X固有の特別なリクエストにすぎない「静かな部屋」に対応することのできる状況にあるのか否かについてまで,本件ウェブサイトに情報を掲載して提供する法的義務が生じるとはいえず,他に,そのような法的義務が生じることを基礎付ける事情も認められない。よって,この点に関するXの主張は理由がない。
また,Xは,Yが予約内容を正確に仲介すべき債務を負っていたと主張する。この主張が,予約内容を正確に伝達すべき債務であるという趣旨であれば,Xが入力した他の予約情報が本件ホテルに伝達されていながら,特別リクエストのみ伝達されていないということは想定し難いのであるから,Yは予約内容を伝達する債務を履行したといえる。また,上記の主張が,Yにおいて,本件ホテルに対し,Xが静かな部屋を要望している旨を伝えて,本件ホテルに何らかの対処を求めるべき債務があるとの趣旨であるとしても,上記イのとおり,Yの債務は予約の伝達と予約確認書メールの送信に尽きるのであって,それ以上に,Yが,本件ホテルに対し,Xの特別リクエストに応じた対処を求めるべき債務が存在するものとはいえない。よって,この点に関するXの主張も理由がない
その他に,Xは消費者契約法10条,景表法違反なども主張していたが,いずれも退けられている。