東京オリンピックのサイバー関連の出来事についてまとめてみた(転載)


 東京オリンピックのサイバー関連の出来事についてまとめてみた 

東京オリンピックについて、これまで関係組織からの発表や報道されたサイバー関連事象についてまとめます。この記事は個別事象を整理したもので各々の関連性は一部を除きありません。

大会中に起きたこと

  • 東京オリンピック期間中、過去大会で見られたようなサイバー攻撃などに起因する情報流出やシステム破壊の発生は報じられなかった。また官房長官は「サイバー攻撃に起因する問題発生は確認されていないとの報告を受領している」と7月26日にコメントしている。

  • サイバー空間上でオリンピックに関連する事象が何もなかったわけではなく、大会に乗じた偽動画配信などの詐欺サイトの存在が報告されていた。またSNS上で選手への誹謗中傷が行われる事例も多数確認された。

1. 大会関係者に関連するサイバー事象

(1) 大会組織委員会

公式サイトへの大量アクセス (2015年11月14日発生)
  • 大会組織委員会の公式サイトに対して、11月4日20時半頃にDoS攻撃とみられる短時間の大量のアクセスが発生。

  • 2015年当時のサーバー運営会社*3が攻撃観測を受け自主的な避難措置として通信遮断を実施。組織委員会のWebサイトは11月5日 9時頃までに復旧をした。

  • 当時公式エンブレムの公募受付が11月24日から予定されており、応募要領をダウンロードできるよう組織委員会のFacebook等で閲覧できる措置が取られた。

Twitter公式アカウントの一時凍結 (2020年1月25日発生)

発足7年を受け公式Twitterアカウントに2013年生まれと誕生日を設定してしまい、Twitterのサービス利用にあたって年齢制限が設定されていることから公式アカウントが一時凍結されてしまった。

開会式当日のサイト閲覧障害 (2021年7月23日発生)

Akamaiの「Edge DNS」で24日0時46分頃に障害が起きたことにより、同社のサービスを利用する東京オリンピックを含む複数のサイトでも接続障害が発生した。Akamaiはサイバー攻撃によるものではなく、ソフトウェア構成の変更が原因で障害が発生したと説明。構成変更のロールバックを行い、障害影響は最大で1時間程度とされた。


公式オンラインショップの閲覧障害(2021年7月23日発生

公式オンラインショップで23日21時頃(開会式開始から1時間後)から翌日0時半頃まで接続障害が発生した。警察はサイバー攻撃によるものという認識はないと取材にコメントしている。


マスコット撮影が有料との虚偽情報出回る (2021年7月27日報道)

  • マスコットと一緒に写真を撮ると手数料として5000円が必要とした海外メディアが選手への取材を記事化したものがネット上で拡散。

  • 大会組織委員会はマスコット(オリパラ共に)と一緒に撮影し、SNS上へ投稿を行う場合において対価の設定を行わないことが出演ガイドラインに記載されており、有料撮影について否定した。

(2) 国際オリンピック委員会(IOC)

公式Twitterアカウントで不正な投稿 (2020年2月15日頃発生)

  • OurMineを名乗るグループによって複数のTwitterアカウントから勝手な投稿が行われる事象が発生。その中にIOCが運営するアカウントも含まれており、影響を受けたのはOlymic(@olympics)、IOC Media(@iocmedia)、Athlete365(@athlete365)、Youth Olympic(@youtholympics)、リオ大会公式アカウント(@rio2016)などが報じられている。

  • 同タイミングに被害に遭ったFCバルセロナはデータ分析用のサードパーティアプリを通じ第三者による投稿が行われたと報告している


(3) 日本オリンピック委員会(JOC)

JOC内でランサムウエア感染被害(2020年4月下旬と報道)

JOC事務局内でランサムウエアによる感染被害が発生し、対応として約60台の端末を約3000万円をかけ入れ替えていたと2021年6月に報じられた。身代金要求は行われていない。また、この件に関してJOCより公式の対外発表は行われていない。

(4) チケット購入者、ボランティア

フリマサービスでユニフォーム転売(2021年7月7日報道)

  • メルカリやラクマ、ヤフオクなどでボランティアの公式ユニフォームや入館パス(アクレディテーションカード)とみられる出品が行われた。既に約1万円での取引が行われた事例も確認された。大会組織委員会、東京都それぞれのボランティア向け物品での出品が確認された。参加規約では大会関係のボランティアは支給品の第三者譲渡は禁止されている。

  • ユニフォームの出品行為は無観客開催が決定された7月8日頃から増加。

  • メルカリは2021年7月17日以降、ユニフォーム等大会関係者向け物品の出品を禁止すると発表した。またラクマでは役職、身元の偽装が可能な制服等の出品を禁止しておりボランティアユニフォームも該当することから出品の削除対応を行った。



サイト登録者のパスワード観測報告 (2021年7月21日報道)

  • 7月21日に東京オリンピックのチケット購入者やボランティア関係者のIDとパスワードが販売されているとセキュリティ研究者によりSNSへ投稿が行われた。投稿された画像からは10件のURL、ID、パスワード、流出日、被害IPアドレスがリストになったものが確認された。(ID、パスワード、被害IPはぼかしが行われている)取材に対して東京オリンピック関連のサイトからの流出ではないとの見解を組織委員会は示している。また他のセキュリティ関係者は確認された情報はRedLineなど情報窃取を行うマルウエアにより当事者の利用するPCから盗まれた情報の可能性があると指摘。個人のPCから個別に集められたもので、大規模な流出になる可能性は低いとされた。

  • 報告を行ったセキュリティ研究者は認証情報以外には暗号化された機密文書コロナ関連の個人情報なども確認されたと主張しこれに該当するとみられる報道が行われていたが、その後確認した情報の一部は公開されたものだったと訂正を行っている。また、登録が行われたサイトへログインができれば氏名や住所などの情報も参照することが出来る。

  • 日本政府に対して7月14日に情報提供が行われており、10件のアカウントに対して大会組織委員会は注意喚起とパスワードリセットを行っている。

(5) 内閣サイバーセキュリティセンター

富士通のProjectWeb不正アクセスで大会関係者情報流出(2021年6月4日報道)

  • 富士通のProjectWebが不正アクセスを受けたことにより、内閣サイバーセキュリティセンターの情報流出が確認された。流出した情報の中に、サイバー攻撃への対応を目的とした訓練に参加した約90組織(約170名分)の役職、氏名等が含まれていた。参加組織には大会組織委員会関係者や東京都、福島県等の会場担当の自治体、スポンサー企業などが含まれていた。

  • NISCは流出情報がオリンピック関連かは明らかに出来ない、業務影響は確認されていないと取材に回答している。

(6) オリンピック参加選手

SNS上で相次ぐ誹謗中傷(2021年5月以降)

  • TwitterやInstagramなどで大会参加選手に対して国内外から誹謗中傷が相次ぎ行われた。敗退したことを受けてであったり、試合採点の不満のはけ口として行われるケースが確認されている他、大会開催前も選手に対して出場辞退や開催反対を求める投稿が行われた。警視庁は本人から被害届が提出された際は真摯に対応を行うと方針を示した。また選手が反応したことを取り上げた記事が誤った内容であったことから延焼するケースも発生した。

  • 委託を行っていた編集者が個人で利用するアカウントにおいて人権侵害を伴った不適切な投稿が行われたとして、委託元が契約解除を行ったことを公表する事例もあった。

  • JOCは選手への誹謗中傷を監視するチームを設置することを大会前より明らかにしており、Twitter社と連携する方針であることが報じられていた。東京オリンピック中に誹謗中傷行為にあたるとみられた書き込みについてはモニタリングを行い、該当する事例も記録している。


ベッド破壊動画公開し関係者が謝罪 (2021年7月26日)

  • オリンピック選手村で選手らが就寝用に利用するベッドが段ボール製だったことを受け、「何人が乗ったら壊れるか」を検証する動画をイスラエルの選手がTiktokに公開。ベッドは最終的に9人がジャンプをして壊れてしまいベッドが壊れた様子も流された。

  • 段ボールベッドはエアウィーヴが開発したもので耐荷重は200㎏。取材に対して破壊されたベッドが拡散されたことは残念としつつ、選手にケガがなく良かったとコメントをしている。

  • テレビ局がこの動画を取り上げたことでネット上で拡散。その後動画は削除され、行為をした選手が謝罪動画を公開することとなった。

選手村にユニフォーム廃棄で批判(2021年7月29日)

  • オリンピックで使用したユニフォーム等が選手村に廃棄されていたとして、その写真がSNSへ投稿され拡散。

  • 廃棄されたユニフォームはメキシコのソフトボール競技の選手が来ていたもので、写真を投稿したのは同国別競技の選手。同国ソフトボール連盟は徹底した調査を行うとの考えを表明している。

(7) その他

大会関係者を狙った不審メール (2020年1月下旬発生)

  • IOC、組織委員会の連名による英文の不審メールが確認された。メール文中にはURLが記載されており、五輪ロゴが掲載されたフィッシングサイト(メールアドレス、パスワードの入力フォーム)に誘導される。

  • Trend Microは自社の観測より、不特定多数にばらまいたものではなく、狙いを絞ったものである可能性を指摘している。

関係者向けWifiの事前共有鍵が晒される (2021年7月26日)

大会関係者向けに開放しているフリーWifiのSSIDが「sushi2020」「sakura2020」と設定されており、興味深いとして取り上げられた複数の記事で事前共有鍵まで含めて撮影が行われた写真が掲載された。この件を受けて被害などが発生したなどは報じられていない。