尊敬するCIOの条件


ガートナーの長谷島さんの本「変革せよ!IT部門」を読んでいるのだが、保守・運用領域が出発点の自分にとって非常に勇気づけられる。

ITの領域には、期間を決めて金と人をぶち込むプロジェクトと、その後長期にわたるシステムマネジメント(保守・運用、略してシスマネ)がある。

プロジェクトは期間を定めてリソースを投入し、アウトプットが明確なため、非常に評価しやすい。

一方、シスマネはユーザー要望を受けた改善・改修や、パッチ適用を中心としたメンテナンスが中心となり、障害を防いだ安定稼働が求められる。

しかし、悲しいことにシスマネは安定稼働を実現すると目立たなくなり、コスト削減の脅威にさらされる。

一方で障害を起こすとクローズアップはされるものの、叱咤の嵐となる。

個人的にはこのような裏方に近いシスマネ部隊をしっかり評価できるか否かがCIOのスキルの一つと考えている。

1年間システムが安定稼働していたとする。

ただ、その要因が、

『しかるべき対応を実施して安定稼働を実現』

したのと、

『特に何もしていなかったけど、幸運にも障害が起きなかった(=安定稼働)』

というのでは、意味合いが全く異なるのである。

長谷島さんはこれを神輿に例えていたのが興味深かった。

「祭りの神輿で言えば、先棒の担ぎ手は派手で目立つので、周囲から評価されやすい。ところが担ぎ棒の真ん中にいて、そう簡単には交代できない地味な位置の担ぎ手はなかなか評価されない。でも彼らは体を張って、神輿を支えているのだ。」

長谷島さんのような、ITにおける保守・運用を評価できるマネジメントは個人的には非常に貴重だと思っている。

恐らく現場経験が無いとこの知見は身につかず、コンサル上がりの社長なんかは一生理解できないんじゃないかと思う。

現場に理解のあるCIOが増えることを願う。