【転載】クラウド化か、それともオンプレ回帰か ITインフラの投資動向に現れた変化~パフォーマンスやサービスレベルの問題でオンプレ回帰の流れも~



クラウド化か、それともオンプレ回帰か ITインフラの投資動向に現れた変化――IDC調査:

 IDC Japan(以下、IDC)は2020年10月21日、国内の「ハイブリッドクラウドインフラストラクチャ」の利用動向に関する調査結果を発表した。

 同調査は、国内企業/組織でITインフラ導入の意思決定やプロセスに関与する回答者を対象に2020年7月に実施し、505人から有効回答を得ている。

ITインフラ投資の決め手となる評価基準とは?

 調査結果によると、ITインフラへの投資を決定する評価基準は、「業務スピードの向上」(38.8%《複数回答、以下同》)、「システム利用者の満足度向上」(35.4%)、「システムのサービスレベルの向上」(34.7%)に加え、「売り上げ拡大への貢献」(34.5%)、「新規ビジネスの創出」(33.5%)といったビジネス価値実現への貢献が上位に入っていることが分かった。これらは年々上昇傾向にあるという。

PhotoITインフラ投資の評価基準(n=505、※複数回答、上位5項目を抜粋)(Source:IDC Japan, 10/2020)

 これらの回答から、企業/組織にとってITインフラは、「デジタルトランスフォーメーション(DX)の基盤となり、ビジネス変革をけん引する役割を担うもの」として期待が高まってきているとIDCでは分析している。

 中でも、「自社のDXは企業戦略と全体的/長期的に連動する」と答えた回答者では、DXのITインフラとして「プライベートクラウドに加え、パブリッククラウドサービスの活用」が進んでいることが判明。また、DXの推進に伴って、ITインフラの「SD(Software-Defined:ソフトウェア定義)化」や「仮想化」への投資が増加していることが分かった。

「クラウド化推進」の一方「オンプレ回帰」を選択する企業も?

 「今後利用を増やしたいITインフラ」としては、「パブリッククラウドサービス」「プライベートクラウドサービス」「オンプレミスプライベートクラウド」が上位を占めた。クラウドサービスの利用に加え、「オンプレミスITインフラのクラウド化」を進める意向も高いことが分かった。

 一方、「パブリッククラウドサービスからオンプレミスやプライベートクラウドに移行」した実績や、2年以内の移行予定がある回答者は、それぞれ85%を超え、「オンプレミス回帰」の傾向が鮮明になった。

 その理由としては、「セキュリティの向上」「データやアプリケーションの連携」「管理の一元化」「パフォーマンスやサービスレベルの向上」が上位に上がった。

 また、複数のクラウドを統合的に管理する「ハイブリッドクラウド」を利用する回答者の割合は、現在の4.8%から2年後には13.0%に拡大する見込みだという。

 複数のクラウドを使い分ける用途は、現在では「ディザスタリカバリー(DR)」「バックアップ」「アーカイブ」「本番環境の移行、期間限定での利用」の割合が高い結果だった。今後は、「パブリッククラウドの新技術とオンプレミスの連携」や「アプリケーションに応じて最適なITインフラを使い分ける」といった用途の割合が高まり、より高度な活用が進むとみている。

 迅速なビジネス変革を実現し、不確実性に対処するには、ITインフラの俊敏性、拡張性、効率性を向上し、より動的なITリソースの活用が求められる。企業/組織にとって、SD化やハイブリッドクラウドによって疎結合化を進め、高度な使い分けに柔軟に対応できるITインフラへと変革することが重要になるとIDCでは分析している。