はじめに
Part 2: ランサムウェア対応チェックリスト
検知と分析
1. 影響を受けたシステムの特定と即時の隔離
- 複数のシステムまたはサブネットが影響を受けたと思われる場合、ネットワークをスイッチレベルでオフラインにする。インシデント発生中にシステムを個別に切断できない場合があるため。
- ただちにネットワークを一時的にオフラインにすることができない場合は、ネットワークケーブル(例. イーサネット)の場所を特定し、感染を封じ込めるために、影響を受けたデバイスのプラグを抜くかWi-Fiから切断する。
- 最初に侵入した後、攻撃者はあなたの組織の活動や通信を監視して、自分たちの攻撃が検知されていないかを知ろうとする。したがって、組織で協力して、攻撃を検知したことや対策を取ろうとしていることを攻撃者に知られないように、電話などネットワーク以外の通信手段でシステムを隔離すること。さもないと攻撃者は横展開して攻撃を続けようとしたり(これはすでにありふれた戦術になっている)、ネットワークをオフラインにされる前にランサムウェア感染を拡大しようとする。
2. デバイスの電源を落とす例外的なケース
3. リストアとリカバリの優先順位付け
- リストアすべき重要システムの特定と優先順位付けをおこない、影響を受けたシステム内のデータの性質を確認する。
- リストアやリカバリの優先順位付けは、あらかじめ定義しておいた重要情報資産リストに基づいて行う。そのリストには安全衛生、収益源となるシステム、他の重要な情報システムや、それらシステムが依存するシステムも記載しておくこと。
- 影響を受けていないと思われるためリストアやリカバリの優先順位を下げたシステムやデバイスも記録しておくこと。そうすればあなたの組織はより効率的に業務を再開できるようになる。
4. 初期分析の文書化
5. 利害関係者と今後の対応についての合意形成
- あなたが入手できる情報を共有して、インシデントに関係する支援をいちばんタイムリーに受けられるようにすること。状況の変化に応じて、マネジメントや管理職に定期的に情報提供すること。関係者の中には、IT部門、マネージド・セキュリティサービスプロバイダー、サイバー保険会社、各部署の選任されたリーダーを含めること。
- 関係する政府機関や、ISAC、地方や国家の司法機関などの支援をうけることも考慮すること。下記連絡先リストを参照。
- 必要に応じて、広報部門と連携して社内および社外に正確な情報が伝わるようにすること。
- 'Public Power Cyber Incident Response Playbook' には組織としてのコミュニケーション手順の指針や、対外的なセキュリティインシデント発表のひな型があるので、あなたのチームと協力してできるだけ早く同様の手順や公式発表の草稿を作っておくこと。インシデント発生中に公式発表文を作成するのは最善策ではない。社内外とどの程度詳細に情報共有するのが適切か、情報をどのように流すのかは、このPlaybookを参照すれば事前に決めておくことができる。
封じ込めと除去
6. システムイメージとメモリキャプチャの採取
- 非常に消失しやすい性質のエビデンスや、一部しか確保できないエビデンスについては、損失や改ざんを防ぐために十分注意して保存すること(例. システムメモリ、Windowsセキュリティログ、ファイアウォールのログバッファ内のデータ)
7. 法執行機関への相談
8. 影響を受けたシステムの特定と封じ込め
- 既知のランサムウェアのバイナリの実行を停止、または無効化し、システムに対する被害や影響を最小化する。その他、関連する既知のレジストリ値やファイルを削除する。
9. 最初に不正侵入を受けたシステムとアカウントの特定
10. 関連システムの封じ込め
- VPN、リモートアクセスサーバー、シングルサインオン、クラウド、その他の外部公開されている情報資産の無効化。
11. 推奨する追加対策:サーバ側データ暗号化の迅速な特定
- 感染したワークステーションによってサーバ側のデータまで暗号化されてしまった場合、それを素早く特定する手順は以下のとおり。
- 関連するサーバーで「コンピュータの管理」>「セッション」および「開いているファイル」をチェックし、それらのファイルにアクセスしているユーザーやシステムを特定する。
- 暗号化されたファイルやランサムノートのファイルプロパティーをチェックし、それらのファイルの所有者となっているユーザーを特定する。
- ターミナルサービスのリモート接続マネージャーのイベントログをチェックし、成功しているRDP接続がないか確認する。
- Windowsセキュリティログ、SMBイベントログ、関連するすべてのログをチェックし、重要な認証イベントやアクセスイベントがないか確認する。
- 影響を受けたサーバーでWiresharkを実行し、ファイルの書き込みや名前の変更に関係するIPアドレスをフィルタで特定する(例 “smb2.filename contains cryptxxx”)。
12. 侵入検知・防止システムのログ精査
- 先行して侵入している「ドロッパー」マルウェアのエビデンスを探す。ランサムウェア感染はそれ以前に起こっていた未解決のネットワーク不正侵入の証拠かもしれない。ランサムウェア感染は、TrickBot、Dridex、Emotetといったランサムウエアがすでに存在していた結果であることが多い。
- これら最新のマルウェアのオペレーターはネットワークへのアクセス方法を販売していることが多い。場合によっては、攻撃者はそうしたアクセス方法を悪用してデータを窃取してから、データを公開するぞと脅迫した後で、さらに被害者を脅迫して支払いを迫ろうとネットワークをランサムウェアに感染させる。
- 攻撃者はネットワークに手動でランサムウェアをドロップし、不正侵入後の活動を分かりにくくする場合がある。継続的な侵入を防ぐには、バックアップから復旧させる前にそのようなドロッパーを注意して特定しておく必要がある。
13. 継続的攻撃の分析
- 外部から内部(outside-in)の継続的攻撃には、不正アカウントによる外部システムへの認証済みアクセスや、境界システムのバックドア、外部システムの脆弱性の不正利用などが含まれることがある。
- 内部から外部(inside-out)の継続的攻撃には、内部ネットワークに埋め込まれたマルウェア、または環境寄生(自給自足)型のシステム変更(例. Cobalt Strikeのような市販の侵入テストツールの悪用、PsExecを含むPsToolsの悪用、マルウェアを遠隔インストールし制御することによるWindowsシステムの情報収集や遠隔管理操作、PowerShellスクリプトの悪用)が含まれることがある。
- これらを特定する方法として、エンドポイント検知・対応(EDR)ソリューションの導入や、ローカルとドメインのアカウント監査、集中ログ収集システムで見つかったデータの精査、環境内での動きが一度でも特定された場合は、その該当するシステムのより深いフォレンジック分析が含まれることがある。
14. 優先順位に基づくシステム復旧
15. パスワードリセットと未対応部分への対処
環境が完全にクリーンにされ復旧した後(影響を受けたすべてのアカウントや継続的な不正メカニズムの除去を含む)、影響を受けたすべてのシステムのパスワードリセットを行い、セキュリティ面や可視化されていなかった部分の脆弱性や未対応部分に対処すること。