1. 導入:なぜ今、UACなのか?
インシデント発生時、迅速かつ確実な証拠収集が求められます。LinuxやmacOSをはじめとするUnix系システムでは、ログファイルや設定情報、揮発性データなど、調査対象が多岐にわたります。UAC(Unix‑like Artifacts Collector)は、そうしたデータを自動収集し、インシデント対応やフォレンジックの現場での動きを飛躍的に効率化してくれるツールです。
2. UACとは?
UACは、法執行機関、フォレンジック調査担当者、セキュリティアナリスト向けに設計された、強力かつ拡張可能なインシデントレスポンス用コレクションツールです。Unix系システム全般(AIX、ESXi、FreeBSD、Linux、macOS、NetBSD、NetScaler、OpenBSD、Solaris)に対応し、IoTやNASといった環境にも展開可能です。完全に依存関係不要で、軽量かつポータブルな点が特徴です。SANS Internet Storm Center+11GitHub+11Reddit+11
3. 主な特長
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インストール不要・軽量・ポータブル:シェルが動く環境なら動作可能GitHubtclahr.github.io
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YAMLでカスタマイズ可能なプロファイル:用途に応じて収集対象を柔軟に定義GitHubtclahr.github.io
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揮発性の順序(order of volatility)に配慮した収集:重要度とタイミングを考慮したデータ取得GitHubtclahr.github.io
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実行中プロセスの情報収集とハッシュ化:ディスク上にバイナリがないプロセスも対象にGitHubtclahr.github.io
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Bodyfile形式のファイル/ディレクトリ情報抽出:後続分析のタイムライン整備に有効GitHub+2SANS Internet Storm Center+2
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メモリ(揮発性)データの取得方法も複数対応(Linuxのみ)GitHubtclahr.github.io
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クラウドへの出力にも対応(S3、Azure、SFTP等)Cyber Triage+1
4. 対応OS/環境
UACは、以下のような多彩なUnix系OSに対応:
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AIX、ESXi、FreeBSD、Linux、macOS、NetBSD、NetScaler、OpenBSD、Solaris
さらにはNAS機器、OpenWrt、IoTデバイスなどにも対応可能な軽快さが魅力です。CyberSecTools+4GitHub+4tclahr.github.io+4
5. インストール不要!実行までの流れ
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GitHubのReleasesページから最新のアーカイブを入手(v3.2.0が最新、2025年8月時点)tclahr.github.io+12GitHub+12X (formerly Twitter)+12
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解凍して、シェル上で
./uac
を実行 -
プロファイル(
-p
)やアーティファクト指定(-a
)を組み合わせて利用docs.velociraptor.app+5tclahr.github.io+5SANS Internet Storm Center+5
実行例:
6. 実務での活用シーン
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インシデントレスポンス:侵害を受けたUnix系システムから迅速に証拠収集
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フォレンジック調査:揮発性データやプロセス情報、ログを体系的に取得
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セキュリティ演習/CTF:再現性ある収集ワークフロー構築
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エッジ環境対応:IoTやNAS、ネットワーク機器の記録取得にも最適
Cyber Triageでは、収集したデータを自動解析パイプラインに取り込む運用も可能です。Cyber Triage
7. 注意点・応用Tips
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信頼できないバイナリの利用リスク:被害システムの標準バイナリが改ざんされている可能性あり。静的リンクの信頼済バイナリを同梱するのが望ましいCyber Triage
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アクセス日時の上書き:ツール実行時にファイルのアクセス(atime)が更新されるため、先にタイムスタンプベースの収集が必要なケースありSANS Internet Storm Center
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プロファイルやアーティファクトの追加・編集も柔軟に対応可能。独自プロファイル作成や、systemdタイマー情報の追加などユーザーによる拡張も簡単Righteous IT
8. まとめ:UACがもたらす価値
UACは、Unix系システムにおける証拠収集を自動化・迅速化する強力なツールです。
インストール不要、軽量、オープンソース、クラウド対応、カスタマイズ自在と、その汎用性は非常に高く、インシデントレスポンスやフォレンジック調査の現場で即戦力となるでしょう。皆さんのツールキットにぜひ加えていただきたい一品です。