JAL機の衝突事故は、航空機の避難テスト基準の再考を迫る

 

2024年1月2日に東京の羽田空港で発生した日本航空と海上保安庁の航空機の衝突事故は、緊急時の航空機の避難基準の再考を迫る出来事となった。

事故機となった日本航空516便は、エアバスA350-900型機で、非常口が16か所ある。しかし、衝突の影響で4か所の非常口が使用不能となり、乗客約370人、乗員約12人の全員が避難するのに約18分かかったとされる。

航空機の認証要件では、非常口の半分が塞がれていたとしても、90秒以内に避難させることができることが求められている。しかし、今回の事故では、その基準を満たすことができなかった。

この食い違いは、避難基準の妥当性や、認証試験の現実との乖離を問う声を呼び起こしている。

具体的には、以下の疑問が提起されている。

  • 90秒という基準は、本当に達成可能なのだろうか。
  • 認証試験は、実際の事故状況を十分に反映しているのだろうか。
  • 試験の再設計は、意図しない結果をもたらすのではないか。

これらの疑問への回答は、今後の調査や検討によって明らかになるだろう。しかし、今回の事故は、航空機の避難基準の再検討が喫緊の課題であることを示した。

米国のダックワース議員、避難基準の見直しを再提唱

米国では、2022年後半にダックワース上院議員(イリノイ州選出、民主党)とボールドウィン上院議員(ウィスコンシン州選出、民主党)が、連邦航空局(FAA)に対してより現実的な避難時間テストの実施を義務付ける法案を提出していた。

ダックワース議員は、当時のインタビューで「飛行機に60人を乗せ、誰も手荷物を持たず、子供や高齢者がいないように装うことは、現実の状況を反映していない」と語っていた。

この法案の修正版は、今年中に可決される見込みのFAA再承認法案に含まれている。

ダックワース議員は、日航機衝突事故を受けて、この法案の再提唱を表明した。

ダックワース議員は声明の中で、「東京で起きたことは悲劇でしたが、もっと悪い事態もあり得ました。しばらくの間、詳しいことはわかりませんが、私は、このようなことがアメリカでも起きる可能性があると、ずっと前から警告してきました」と述べた。

ダックワース議員はさらに、今回の事故は90秒ルールの再考の必要性を浮き彫りにし、「キャリーバッグ、子供、高齢者、障害を持つ乗客など、現実の状況を考慮した緊急避難基準をようやく確立し、安全な飛行を実現できるようにすべきだ。それが少なくとも飛行機に乗る人々が求めていることです」と述べた。

ダックワース議員は、新たな基準の下で航空機が90秒のテストに失敗しても、必ずしも航空会社が変更を加える必要はないと指摘した。むしろ、基準自体が非現実的、役に立たない、不要なものである可能性があるため、基準自体を変更する可能性があるのです。

「最終的には、これは長期的にすべての人をより安全にするだろう」と2022年のインタビューで述べています。

避難基準の見直し、今後の課題

JAL機衝突事故は、航空機の避難基準の見直しを迫るものとなった。

今後は、90秒という基準の妥当性や、認証試験の現実との乖離を検証するとともに、より現実的な避難基準の策定が求められるだろう。

出典:Tokyo crash raises questions about realism of plane evacuation testing standards