【セキュリティ事件簿#2025-095】山形鉄道、ボイスフィッシングで1億円だまし取られる

 

山形銀行を装った不審な自動音声電話が県内の企業に相次ぎ、複数の企業で不正送金の被害が確認される問題が発生した。この中で、フラワー長井線を運営する第三セクター・山形鉄道(長井市)が約1億円の被害を受けていたことが11日、同社への取材で明らかになった。現在、同社は関係市町や県と対応を協議しており、県警はこれを企業を狙ったフィッシング詐欺事件とみて捜査を進めている。

山形鉄道の中井晃社長は山形新聞の取材に対し、「被害額は約1億円にのぼる。現在、県や関係市町と協議中のため、広報対応は控えている」とコメントした。県も「被害の情報は把握しており、対応を協議している」と述べるにとどめた。

県警および山形銀行の広報室によると、不審電話に応じると偽サイトへ誘導され、会社情報やインターネットバンキングの認証情報を入力させられる。これにより、一時的に発行されるパスワードなどの情報が詐欺犯側に流出し、最悪の場合、被害者の口座から現金が引き出される恐れがあるという。

県警サイバー犯罪対策課によると、この手口は「ボイスフィッシング」と呼ばれ、自動音声で誘導し、メールアドレスなどの個人情報を聞き出したうえで偽サイトに誘導し、最終的に現金を詐取するフィッシング詐欺の一種とされる。

山形銀行は、最寄りの支店ややまぎんテレホンセンターで被害に関する相談を受け付けている。

### 国際電話の可能性

山形銀行をかたる不審電話は山形鉄道だけでなく、県内のマスコミやソフトウェア開発会社などにも発生していたことが11日に判明した。これらの電話は途中で通話が切れるケースが多く、発信番号の表示などから国際電話の可能性が指摘されている。

山形市に本社を置くソフトウェア開発会社には、10日午前10時頃、「やまぎんEBを利用する企業に連絡している。より高度なセキュリティー設定が必要だ」「設定しなければ口座が一時的に使えなくなる」とする自動音声の電話があった。「1」を押すとオペレーターの男性に繋がり、「やまぎんネットバンク共同ヘルプデスクの者です」と名乗ったが、その後、音声の接続が悪化し、電話は一方的に切れたという。

また、山形市内の内装工事業者には同日午前11時55分頃、「お客様情報を更新しなければ口座の利用が制限される」との自動音声が流れる電話があった。しかし、直前に山形銀行から注意喚起の連絡を受けていたため、担当者は警戒し、番号を押さずに待機したところ、電話はそのまま切れた。同市内のマスコミにも同日午前10時半頃、総務部に山形銀行を名乗る自動音声の電話があり、発信番号は「18308328139」だったとされる。

出典:山形鉄道、1億円被害 企業に相次ぐ山形銀装う電話、県警がフィッシング詐欺で捜査アーカイブ